映画「蟲師(むしし)」は、2007年3月の公開。10月、DVDレンタルが開始された。「蟲師」は、同名の漫画(漆原友紀 講談社)が原作。「江戸と明治の間にもうひと時代あるような世界」で蟲(むし)と呼ばれる精霊でも妖怪でもない不思議な生き物を巡る幻想的な連作集である。
蟲師とは、蟲を見ることができ、蟲が人間にもたらす奇妙な現象を探求し、対処法を伝える職業のことで、物語の主人公ギンコも蟲師として全国を旅している。
山深い緑の景色や水辺の風景など日本人が、素直に思い浮かべることができるかつての世界が描写されている。映画は原作のいくつかの話をベースにギンコの旅が描かれている……。
その風景は、今も在り続ける湖を取り囲む山々、水辺こそ映らないが琵琶湖の畔そのものだった。

盆地の山々に蓄えられた天水が、伏流水となり湖に注ぐ。水は瀬田川から流れ出て、宇治川、淀川と名前を変えて海へとたどり着く……。山々は、特別な撮影セットやCGなどの編集を必要としない「蟲師」の世界がある。
小鮎は、今も緑に育まれた水を湛える湖に生きているのだ。